日韓徒然話

日韓の色々なことについて気づいたことを徒然に綴っているブログです

とある脱北者の方の話2

(前回の続き)

私が彼に脱北した理由を聞いたところ、彼はこう答えた。

 

北朝鮮では、大空を羽ばたけないと思った」

 

???

一瞬、なんのことを言っているのかわからなかった。
しかし、彼の話を聞きながら、彼が何を言いたいのかがわかってきた。

 

要するに、北朝鮮では、自分が本当にやりたいことをやる自由がない、というのだった。

ただ、それを聞きながらも、当然腑に落ちない部分がある。

実際、彼の父親は労働党の幹部で、彼自身の暮らしも、将来は約束されていたものだった。それなのに?
しかも、運よく彼が大空を飛べたとしても、残された彼の家族はどうなってしまうのか。

 

彼は言った。「私は、残される母が何を望んでいるか、本当に考えた」

彼は脱北する際、母親が自分にかける本当の願いは何なのか、何日間も考えたという。そして、母が自分にかける願いは、大空を羽ばたくことだと、そう信じて、脱北したのだそうだ。

父親が亡くなって三年が経った、父親の命日の次の日に。

 

彼は、コンビニで買ってきたあるウイスキーを飲みながら、懐かしそうに、「一緒に脱北した友人と、小さな舟の上でこのウイスキーを飲んだんだよ」と話してくれた。

 

彼の話を聞きながら、私は恥ずかしくなった。

私が北朝鮮について持っていたイメージとといえば、北朝鮮の国旗と、党の委員長と、軍事パレードで一糸乱れず行進する軍人と。

独裁政権の下、統一された価値観を持ち、自由は許されない。
北朝鮮にいる人が、未来のことを考えているなんて、考えたこともなかった。

しかし、私の目の前にいる人は、自分の人生、家族、未来、、、
それらを真剣に考えて、考えて、考えた結果、脱北するという選択をした。

 

彼の話を聞きながら、自由とは何か、そして、その自由を与えられた私は、本当にその自由を活用できているのか、ということを考えた。

 

彼とはその後、思いついたらたまに連絡をとったりする。

学業に忙しいのか、返事に少し時間差があったり、それも、彼らしいな、と思ったりする。

この文章を書きながら、久しぶりに彼に連絡をとって見ようと思う。今は何をして、活躍をしているだろうか。楽しみだ。